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筑豊のひとたち

伝統の息吹を目にしてきた田原履物店の田原治雄さん

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全国どこでもそうかもしれないが、思わぬ所に一角の人がいるものだ。筑豊でいえば田原履物店の田原治雄さんがそうだろう。
新飯塚商店街に古くからある田原履物店は、もとは「田原桐材店」といい、昭和5年ごろに、佐賀から来た父親の辰一さんがこの地に開店した。
当時は炭鉱景気で、仕入れが追いつかないくらい客が多かったという。一流の物が飯塚に集まるというので、東京や大阪から買いに来ることもあったようだ。今も店の奥に、婚礼の花嫁や芸奴が履く甲掘とか、伊達者が好んだ草履や下駄が置いてあり、当時の栄華をわずかながらしのばせる。
当の田原さんは昭和21年に飯塚工業学校を卒業した後、ずっとこの店を手伝っていたが、32歳で「福岡銘菓原料㈱」に入社する。この会社は当時、ひよこ本舗の餡(あん)を作っていて、そのノウハウを取得するため、ひよこ本舗から派遣された。
以来、ひよこ本舗の役員を経て数年前に退職するまで、味作りの面で同社の発展に大きく関わってきた。時代の流れとともに現われては消えていった数々の商品も開発の中心に立った。
今でも田原さんの手元には、おいしい餡を作る手順が示された分厚いノートが残っている。
「これは人には見せられない」としぶる田原さんに無理を言って見せてもらったが、なんだか理科や化学のレポートを読んでいるようで、なるほど、おいしさだとか伝統の味というのは、しっかりした裏づけがなければ成り立たないのだなと感心した。
飯塚市新飯塚4丁目
TEL0948(22)1737
9時~6時 日曜休み